走行性や静粛性、路面を滑るような乗り心地にラグジュアリーなインテリア。近年、「高級車」カテゴリの水準は上昇する一方だが、目が肥えたエグゼクティブ層たちの要求は、常に「そのさらに上」を往く。ドイツ車、イギリス車、そして日本車。各国の名門たちは、凄まじい速度で進化を続け、それぞれに「販売好調」を維持している。
その中で、いつも独自のステイタスを保持しているのが、イタリア車だ。理屈ではなく五感に直接訴えてくるような、人生の楽しさをそのまま表現するようなイタリアンブランドは、いつの時代も一線を画す立ち位置にいる。中でも、昨年1年間の世界での販売台数が過去最高をマークした「マセラティ」の絶好調ぶりは、目を見張るものがある。
1914年、ボローニャに設立した工房で歴史をスタートさせたマセラティは、その昨年に100周年を迎えた。当初は、主に自動車のチューニング業務に携わっていたが、1926年、独自に開発したレーシングマシン「マセラティ Tipo26」を発表する。
マセラティと言えば、ネプチューンが持つ三叉の槍をモチーフにした「トライデントエンブレム」が有名だ。創業地・ボローニャのマジョーレ広場にある「ネプチューンの噴水」にちなむこのシンボルは、このティーポ26から続く伝統。出走したレースで優秀な成績を収めたことで、エンブレムとマセラティの名は一躍世界に轟くこととなった。
1929年には、当時の世界速度記録を樹立した「V4スポーツ ザガート」を、1946年にはレーシングエンジンが搭載された初のGTカー「A6-1500ピニンファリーナ」を発表。1954年にはフロントエンジン搭載のF1マシンとしては最高傑作との呼び声の高い「マセラティ 250F」がサーキットを賑わせた。
マセラティは、主にモータースポーツの舞台を通じて認知を広げてきた。その後、グランプリシーンで磨き上げたエンジン開発技術をベースに、スタイリッシュなボディのスポーツクーペを次々と発表。スーパーカーブームの立役者の一角を占め、盤石な地位を築く。
多くの自動車ブランドと同様、時代の波に揺られることもあったが、本国イタリアを中心に欧州での人気は絶大だ。2014年の100周年では、これを祝う集会が大々的に行われ、世界中からオーナーが参加した。時期を同じくして、欧州における新車販売台数が発表されたが、2014年1月〜9月の総販売台数は前年同期比で実に391%をマーク。ちょっとしたブームと言えるほどの盛り上がりを見せた。
冒頭の通り、現代のカーオーナーは非常に厳しい目を持っている。ご自身でお心当たりがおありの方も多いだろう。そんな中で、創業から100年を隔てて市場が驚くような販売成績を収めるマセラティ。それはそのまま、車のクオリティが支持されていることの証でもある。
冒頭で触れた通り、マセラティは2014年に100周年を迎えた。いま、世界中のカーマニア層はもちろん、ライトな自動車ファンたちの耳目を集めているのは、このアニバーサリーだけが理由ではない。直前の2013年、上海モーターショーで人々を驚かせた約15年ぶりの「復活劇」も大歓迎を受けているからだ。
「マセラティ・ギブリ」は、2ドア2シーターの王道を往くクーペとして名を馳せた。初代の登場は1967年のことで、背が低く、ロングノーズ&ショートデッキのスポーツカータイプとして人気を誇った。その印象的なデザインは、前後して沸き起こったスーパーカーブームの一翼を担う形となったので、いまも人が高い。オールドファンなら、ひと目見れば記憶が呼び覚まされることだろう。
この名車は1972年に生産が完了し、その後は「カムシン」へと伝統が受け継がれたが、1992年に4人乗り2ドアクーペ「ギブリII」として復活。1997年に再び幕を閉じ、その後は「3200 GT」へと引き継がれた。
そして今回、3代目が登場。つまり、ギブリの名は2度目の復活となり、特に往年のファンに大きな衝撃を与えたのだ。
現行ギブリは、マセラティ初となるミディアムセダンとして位置づけられている。「クアトロポルテ」より軽量のコンパクトサイズではあるが、それでも全長4970mm、全幅1945mmというボディサイズは圧巻だ。

しかも、あのギブリの名を冠する限りは、単なるセダンで終わるはずがない。4ドアでありながら、実車を目の前にするとクーペのような印象を受けるのだ。フロントからリアへと流れる優美なラインにも目を奪われるが、何より均整の取れたプロポーションが素晴らしい。上の写真はフロントとサイドを掲載したが、試乗時は斜め前に立ってじっくりと鑑賞することをおすすめする。
フロントには、縦のフィレットを配したグリルが存在感を主張。マセラティの象徴たるグリルの両側は、精悍なネコ目デザインのヘッドライトが睨みを利かせる。そこに、LEDポジションライトのシグネチャーが輝くのだから、車ファンならきっとゾクゾクさせられるはずだ。
インテリアは、まずソフトレザーの高級感を堪能しよう。豪華で上質な肌触りは、まるでラグジュアリーサルーンのようだ。また、大型のタッチパネルとナビ、電子制御シフトセレクターや伝導パーキングブレーキなど、最新のインターフェイスの使用感もしっかり体感したい。インテリアの美しさもイタリア車の特徴のひとつ。ステアリングホイール中央に配された「ネプチューンの槍」が高揚感を煽ってくれる。
グレードは3種を展開しており、エンジンはV型6気筒3.0リッター直噴ツインターボエンジンに加えてディーゼルタイプ(※1 日本未導入)も用意されている。最高速は、ギブリ SのFRモデルで時速285kmにも達するので、アクセルを踏む時は2シーターに乗る気持ちで挑んだ方がよいだろう。
スタイリッシュなカーデザイン、豊富な経験で培って来た技術力が注がれたエンジニアリング。新生ギブリは、高級スポーツサルーンとして、好調・マセラティの新基軸を担う1台と言える。
イタリアの名門の再攻勢を強く印象づけるモデルなので、ぜひ試乗をおすすめしたい。
マセラティを語る上で外せないのはやはり、フラッグシップモデルの「マセラティ クアトロポルテ」だろう。イタリア語で「4つのドア」を意味するクアトロポルテは、1963年の誕生から50年以上にもわたって世界のラグジュアリーサルーンの一角を占めてきた。最高時速230kmを誇るスーパーサルーンとして華々しいデビューを果たした初代以降、大統領の公用車として採用されるなど、世界に名だたるイタリア車のイメージの牽引役を果たしてきた名車だ。
現行モデルは、6代目を数える。前モデルは世界中でさまざまな賞を総なめにしており、人によっては「ライバル各メーカーのフラッグシップ車を超えた」という感想を持つほど完成度の高いセダンだった。これまで以上に名声が高まる中でのモデルチェンジとなったわけだが、2013年の「デトロイトモーターショー13」におけるワールドプレミアでは、期待通りの仕上がりを見せつけた。
最新モデル「クアトロポルテ GTS」は、ひとことで言えば、大型化と軽量化を同時に実現したことが大きな特徴だ。
実用性は損なわずに、豪華さをさらに究めた形となっており、次世代スポーツサルーンの風格を全身から発散している。

エンジンは、ゼロから新設計された。これは数十年ぶりとのことで、開発はマセラティ本社内の「マセラティ・パワートレイン」だ。3.8リッターV型8気筒と、3.0リッターV型6気筒の2種がラインナップされているが、その動力性能は強烈で、最高時速は何と307kmに達している。2ドアの本格スポーツカーに引けをとらないレベルなので、試乗時にはどうぞ心の準備を怠りなく。
そのスポーツフィールは、デザインにも強く表れている。堂々たるロングノーズを軸とした美観は、現行スポーツ「グラントゥーリズモ」との血統を感じさせる。イギリス車やドイツ車が人を軽々しく寄せ付けない厳格さが特徴なら、こちらは人を引き寄せるような官能性を感じさせる。
さすがイタリア車といったところだ。
イタリアの高級インテリアブランド「ポルトローナ・フラウ」製レザーを贅沢に使用したインテリアは、クローズドな貴賓室と言うより、上流社会のラウンジのようだ。シートやダッシュボード、ステアリング、ホイールなどは多彩なカラーでコーディネート可能なので、カスタマイズの楽しさも堪能できる。デフォルトではサルーンとしての重厚感が強調されているので、イタリアンテイストを強く打ち出すアレンジも面白いだろう。
もうひとつ、居住性にも注目したい。広々とした室内はもちろんだが、試乗の際は必ず後部トランクを開けることをおすすめしたい。フルセットのゴルバックを積んでもまだ余裕たっぷりの積載量は、ちょっとしたサプライズ。「ゴルフバッグがそのまま入る」どころではない、この広さ。それでいて、素晴らしい美観を保っているのだから、そのデザイン力には脱帽だ。こうした実用性の高さも魅力のひとつだ。
より大きく、より軽く、より広く、そしてより速く。私たちがイタリア車に抱くイメージをセダンで実現した技術には、改めて驚かされる。クアトロポルテは、ラグジュアリーサルーンの大隆盛に少し食傷気味のエグゼクティブに自信を持って勧められるなモデルと言えるだろう。
ここまでマセラティを代表するモデルを紹介してきたが、いずれも近年の同社の絶好調ぶりを示す完成度についてはご理解いただいただろうか。だが、車はやはり「実際を見る」のが一番。しかも、豊かなデザイン文化を誇るイタリア製品なのだから、なおさらだ。
というわけで、千葉県内にお住まいなら、「マセラティ幕張」に出かけてみよう。昨秋、千葉市美浜区にオープンしたばかりの新ショールームで、敷地面積は何と約600坪。国内のショールームとしては特筆ものの広さを誇る。店内は、白とブルーを基調とした洗練のカラーリングに、ラグジュアリースポーツブランドに相応しいエレガンスが強調されたデザインとなっている。広いガラスが張られた明るい空間は、美を細部まで味わうにもってこいだ。
店頭では、「グラントゥーリズモ」をはじめ、本誌でも紹介した「クアトロポルテ」や「ギブリ」などの現行車種を実車でたっぷりと堪能することができる。また、訪問時は、インテリアレザーやウッドパネルなど多彩なパーソナリゼーションアイテムを展示した「コンフィギュレーションエリア」にも時間を割きたい。より自分らしくカスタマイズしたいオーナーの希望にどこまで答えてくれるのかという点は、車選びの際には極めて重要。スタッフはもちろんプロフェッショナル揃いなので、スペックまわりの情報収集もしっかり行っておこう。また、サービス工場を完備しているので、購入後の安心感についても体感しておくとよいだろう。

アクセスは良好そのものだ。幕張中心部に近く、京葉幕張インターチェンジから車で約3分、湾岸習志野インターチェンジからも約7分なので、特に困ることはないだろう。また、JRおよび京成電鉄「幕張本郷」駅からは徒歩で10分ほど。ショールームに寄った足で都心部でのディナーにも洒落込める便利さだ。
営業時間:9:00〜18:00(火曜定休日/祝日の場合は水曜に振り替え)
電話番号:043-306-5831
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